「ラブホテルって、騒がしい客が問題を起こすと思われがちなんです。でも実際に警察が来るのは、“普通に見える客”の方が多かったですね」
そう語るのは、新宿・歌舞伎町のラブホテルで数年間勤務する従業員だ。昼と夜では空気がまったく違い、特に深夜2時を過ぎると、ホテル全体の雰囲気が変わるという。
■深夜に増える“警察を呼ぶしかないケース”
最も多かったのは、男女トラブルだった。
「最初は普通なんです。でも途中から怒鳴り声や物音が聞こえてくる」
フロントには「助けてください」「部屋から出られない」といった内線が入ることもあるという。中には泣き声だけが続き、応答が途絶えるケースもあった。
「従業員だけでは対応できないと判断したら、すぐ警察を呼びます。無理に部屋へ入ることは基本的にしません」
実際、警察が到着する頃には当事者同士が急に冷静になっているケースも少なくない。しかし逆に、それが不気味だったと従業員は振り返る。
「さっきまで怒鳴っていたのに、急に無言になるんです。あの空気は独特でした」
■“部屋から出てこない客”の異様さ
繁華街のホテルでは、長時間出てこない客も珍しくなかった。
清掃時間を過ぎても反応がなく、何度連絡しても応答がない。そうした場合、従業員と警察で部屋を確認するケースもあるという。
「泥酔だけならまだいい。でも、部屋の空気がおかしい時があるんです」
テーブルには大量の酒、散乱した薬のシート、不自然に切られた小袋。従業員は詳細について多くを語らなかったが、「見慣れてくると、“普通じゃない部屋”は入った瞬間に分かる」とだけ話した。
■忘れ物で見えてしまう“客の裏側”
ホテルで特に印象に残るのが、忘れ物だという。
財布やスマホだけでなく、複数台の携帯電話、名前の違う身分証、大量の薬。時には、用途の分からない小さなケースや、不自然に隠された荷物が残されていることもあった。
「忘れ物って、その人の生活がそのまま出るんです」
中でも印象的だったのは、“明らかに取りに戻れない物”が放置されていたケースだという。
「普通なら絶対に取りに来るはずなのに、連絡すらない。そういう時は逆に怖かったですね」
■“何も聞かない”のが現場のルール
ホテル側は、基本的に客の事情へ深く踏み込まない。
「従業員は見ても聞かない。それが暗黙のルールでした」
しかし、深夜の繁華街では、その“触れない空気”の中に、説明のつかない違和感が混ざる夜もある。
「事件になる一歩手前みたいな空気が、ずっと漂ってる日があるんです」
――従業員はそう語り、深夜のホテル街について、それ以上は多くを話さなかった。


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