――なぜ男たちは表に出ず、女だけが摘発され続けるのか
歌舞伎町の夜を歩くと、いまも変わらない光景がある。路上に立つ女性たちと、それを取り締まる警察の姿だ。
だが、その裏側にいる「もう一方の当事者」――金を支払う男たちは、ほとんど可視化されない。
今回、取材に応じたのは30代の会社員男性。都内在住、大手鉄道会社勤務。見た目も経歴も、ごく普通の“社会人”である。
しかし彼は、歌舞伎町で何度も「買う側」に立ってきたと語る。

■「風俗より合理的だった」夜の選択
男が語った最初の言葉は、意外なほど冷静だった。
「店を通さない分、その場で条件を決められる。合わなければやめればいいだけです」
仕事帰り、歌舞伎町を歩き、目が合った女性に声をかける。成立することもあれば、すぐに別れることもある。その“即断即決の取引”は、彼にとって異常な行為ではなく、合理的な選択だったという。
■「罪悪感はない」その理由
買春という行為に対する感情を尋ねると、男は淡々と答えた。
「向こうはお金が必要で、こちらは払う。それだけです。騙しているわけでもないので、罪悪感はありません」
むしろ彼を支えているのは、別の現実だった。
「捕まっている男を見たことがない。それが全てです」
“見えない処罰”が存在しないという感覚が、行動のハードルを下げている。
■ 一度だけ起きた「暴力」と現実の壁
しかし、その夜は例外だった。
交渉が決裂した瞬間、相手女性が突然豹変。首を絞められ、意識が遠のくほどの暴力を受けたという。
「本気で死ぬかと思いました」
直後、警察へ駆け込むも対応はすぐではなかった。事情説明に時間がかかり、ようやく被害届が受理されたのは数時間後だった。
“被害者”になった瞬間、そこには別の現実があった。
■ なぜ「買う側」だけが表に出ないのか
売春防止法は売春そのものではなく、あっせんや勧誘の規制を中心としている。そのため、路上に立つ女性は摘発されやすい一方、買う側の男性は特定・立証の難しさから表に出にくい構造がある。
結果として、「摘発されるのはいつも女性」という状況が繰り返される。
■ 歪んだ均衡の中で
「この仕組みが変わらない限り、買う側は減らないと思う」
男はそう言い残した。
路上の女性を排除しても、需要そのものが消えるわけではない。むしろ見えない場所へと移動し、構造は維持され続ける。
歌舞伎町の夜に横たわるのは、単なる風俗問題ではない。“見えている側だけが処理される”という、歪んだ均衡そのものだ。


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