今年4月頃から、歌舞伎町・シネシティ広場の風景が大きく変わり始めた。広場には連日のようにキッチンカーが並び、週末には音楽イベントや飲食販売で多くの人が集まる。かつて深夜になると若者たちが地面に座り込み、“トー横キッズ”の象徴的な場所となっていた空間は、以前とはまるで別の雰囲気になりつつある。
「明らかに“居座れない空間”に変わった」
そう話すのは、歌舞伎町を長年見続けてきた関係者だ。
■シネシティ広場で進む“トー横対策”
以前のシネシティ広場周辺では、昼夜問わず若者たちが集まり、路上に座り込む光景が日常化していた。しかし現在は、キッチンカーやイベント利用によって人の流れが常に生まれ、長時間滞留しにくい空間へ変化している。
実際、以前ほどトー横キッズの姿は目立たなくなったという声もある。
背景にあるとみられているのが、行政側の強い危機感だ。
今年11月には新宿区長選挙を控えており、新宿区役所は歌舞伎町のすぐ近くに位置する。区役所の“真横”で全国的に知られるトー横問題が続いてきたことは、新宿区にとって頭の痛い問題でもあった。
吉住健一区長もこれまでトー横問題への対応を迫られてきた一人だ。
未成年の深夜徘徊、売春、薬物、犯罪被害――。メディアで繰り返し報じられるたび、“トー横”という名前は全国へ拡散されていった。
区政関係者の間では、
「区長選を前に、新宿区が本格的に“トー横排除”へ動き始めた」
という見方も出ている。
■一方、歌舞伎町側には“別の感覚”も
しかし、この動きに対して、歌舞伎町側が完全に足並みを揃えているわけではない。
地元商店街関係者の一人は、こう語る。
「昔の歌舞伎町は、今よりもっと危なかった。ヤクザが街を仕切っていた時代です。それを思えば、今は若い子が一人で歩ける街になった」
かつての歌舞伎町では、暴力団関係者の存在が街全体に強い影響力を持っていた。しかし暴力団排除条例以降、その空気は大きく変化した。
その結果として現れたのが、“トー横キッズ”という新しい問題だったという見方もある。
つまり、行政側が「排除すべき問題」と見る一方、街の一部には、
「昔よりはマシだ」
という感覚も存在しているのだ。
■行政と現場に生まれる“温度差”
新宿区としては、全国的なイメージ悪化や治安問題を放置できない。一方で、現場の商店街関係者の中には、「若者が集まること自体」を完全に否定していない人間もいる。
「もちろん問題はある。でも、今の歌舞伎町は昔よりずっと普通の人が歩ける街になった。それも事実です」
そう語る関係者もいた。
行政は“排除”を進めたい。しかし街の現場には、“単純に追い出せば解決する話ではない”という空気も残っている。
■消えたのではなく、“見えなくなった”だけなのか
実際、一部の若者たちは周辺エリアへ流れているとの指摘もある。
「シネシティ広場から姿が減っても、問題そのものが消えたわけではない」
キッチンカーで埋め尽くされた広場。その賑わいの裏側では、行政と街、それぞれの思惑が交錯している。


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